仮名序



古今和歌集(905)
仮名序


やまと歌(注.和歌のこと)は
人の心を種として
よろづの言の葉とぞなれりける

世の中にある人
ことわざ(注.事と行為)繁きものなれば
心に思ふことを
見るもの聞くものにつけて(注.託して)
言ひ出(いだ)せるなり(注.歌の姿にした)

花に鳴く鶯(うぐひす)、
水に住む蛙(かはづ)の声を聞けば
生きとし生けるもの
いづれか歌を詠まざりける

力をも入れずして天地(あめつち)を動かし
目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ
男女(をとこをむな)の仲をもやはらげ
たけき武士(もののふ)の心をも慰むるは
歌なり


紀貫之 きのつらゆき


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